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2005年6月10日 (金)

「戯曲 新・平家物語」

前進座の舞台は初演が昭和36年。
吉川英治はその翌年に亡くなったため、この時に書いた台本が≪吉川英治唯一の戯曲≫と称されています。

この台本は、ラジオドラマの台本である「めくら笛」、東をどりの台本である「あづちわらんべ」とともに『戯曲 新・平家物語』として単行本化されています。

さて、前進座の台本として吉川英治が書き下ろした原稿が吉川英治記念館の資料として残っています。
吉川英治には珍しい鉛筆書きの原稿です。
この原稿と単行本を見比べると、意外なことがわかります。

吉川英治は舞台全編の台本を書き下ろしています。
しかし、『戯曲 新・平家物語』に収録されているものは、その原稿とは異なります。
調べてみると、前半は前進座の台本への加筆修正、後半のみ吉川英治の書き下ろし、という形になっているのです。

実は、実際に上演されたのは、吉川英治完全書下ろしの台本ではなく、前進座との合作とも言うべき単行本収録の台本の方でした。
これはおそらく、舞台稽古に立ち会う中で、劇団員たちと様々なすり合わせを行った結果、舞台装置や大道具・小道具の準備などの条件から、そうすることが現実的であると判断した結果なのでしょう。

前進座は昭和38年にもこの舞台を再演していますが、やはり台本は≪合作≫の方でした。
この時に、前進座では≪先生ご自身の筆になる劇化!唯一の戯曲≫とチラシに刷り込んでいます。
そして、これに合わせるかのように、『戯曲 新・平家物語』の単行本が出版されています。
合作と言っても大幅な修正がなされており、吉川英治の監修のもとに構成された作品ということで、事実上≪吉川英治作品≫と認識されたようです。

しかし、結果的に、吉川英治が書き下ろした台本の一部は≪幻≫になってしまいました。
なんとなく残念な気がします。
完全な形で活字化することができれば、面白いと思うのですが。

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