懸賞小説
「馬に狐を乗せ物語」は、雑誌『面白倶楽部』の大正11年9月号~11月号に掲載された作品です。
この時、吉川英治はまだ専業の作家とはなっていませんでした。
まだ、川柳家の時代の作品です。
実は、この作品は講談社の懸賞小説に応募したものなのです。
大正9年、吉川英治は中国の大連に渡ります。ごく簡単に言えば、一旗あげてやろうということだったのですが、目論見が外れて、安ホテルで逼塞する羽目になります。
その時、講談社の雑誌が合同で懸賞小説を募集していることを知り、ホテルの部屋でせっせと書いた作品の一つが、この「馬に狐を乗せ物語」でした。
応募したところ、滑稽小説部門の一等となり、後に雑誌掲載されたものなのです。
それにしても、一旗あげ損ねて、にっちもさっちもいかなくなっている中で、楽しかった川柳仲間との交友に思いをはせながら、それを喜劇的な小説に仕立てている吉川英治の姿を想像すると、ちょっと青春のほろ苦さのようなものを感じます。
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