« 夏 | トップページ | 誕生日 »

2005年8月10日 (水)

本名

昨日付けの文章の中で、「14歳の英次少年」と書きましたが、これは書き間違いではありません。

「吉川英治」というのは実はペンネームで、本名は「英次(ひでつぐ)」なのです。
異母兄があったため、次男ということで「英次」となったようです。

この異母兄は一時期、英次たちとも同居していましたが、父親とそりが合わず、出奔してしまったため、英次は事実上の長男として、後に家が没落した時、一家を支える役目を担うことになりました。

後年、吉川英治として成功をおさめた英次の許を、この異母兄が訪ねてきたことがあります。
27年ぶりの再会でした。
そのことを自筆年譜の昭和6年の部分に、こう書いています。

十二月。突然、少年時に失踪したきり消息不明なりし異母兄政広、三十年ぶりで来訪。茫然相見るのみにて往時の語もなし。漸く卓に向い一酌して、父母すでに亡きを告ぐ。異母兄は中年の事業に成功し各地方に支店をもち妾宅を構えたるなどの全盛時代を得々として語り出づ。幼少の記憶にある異母兄なるやいなやを疑う。

また、「剃刀を手に蚊帳を探る女」(『話』昭和8年9月号掲載)という随筆では、その異母兄が訪ねてきたのが、父親の13回忌の年で、しかも月違いの命日の翌日で、そのたたずまいが死ぬ前の父親そっくりであったため、「墓場の底から、亡父が甦つて来たのではないかと思つた」と書いています。

どうやら、あまり気分の良い再会ではなかったようです。

|

« 夏 | トップページ | 誕生日 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104645/5394644

この記事へのトラックバック一覧です: 本名:

« 夏 | トップページ | 誕生日 »