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2005年9月16日 (金)

裏技

著名人が、旅館に泊まったり料亭で食事をしたりすると、「何かご揮毫を」などと言って色紙などが差し出されることがあります。
作家によっては、これを嫌う方もいますが、吉川英治は、頼まれればどんどん書いた方です。

さて、今回の「新・平家物語」紀行展で取り上げている取材旅行の先でも、吉川英治は揮毫を求められ、自作の句や詩歌を書き残しています。
そのうち、色紙や短冊になっていて、当館で所蔵しているものを今回展示しています。
また、そういう形になっていないものは、それだけ集めてパネルで紹介しています。

ところで、取材旅行に同行した編集者が残した日誌を見ると、そんな風にして吉川英治が書き残した句や詩歌を、律儀に記録してあったりします。

それを見ていると、吉川英治の“裏技”がわかります。

どこに行っても同じ言葉を書くというのは、どちらかと言えば、誰でもがやる“表技”でしょう。
吉川英治もこの手をよく使いますが、もう一つ、自分が以前に作った句や詩歌の文言を一部だけ変える、という手も使っています。

例えば、会津・越後旅行を見てみます。

行きずりの人に乞はるる野菊かな

という句を揮毫して宿の女中に渡していますが、これには「野菊」を「野梅」にした句が別に存在しています。

さか巻きよ わが手にふるゝ 汝れもまた 宿世の縁ぞ あさからめやも

という短歌を、逆巻温泉に宿泊した際に書き残していますが、これは元々は「さかづき(杯)よ」で始まる、お酒についての短歌です。

この手を使えばバリエーションが増える上、もらった方は自分のためだけに新たに詠んだもののように見えます。
すばらしい作戦ですね。
もちろん、元になるものを自分で作っているから良いのであって、そうでなければ盗作になってしまいますが。

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