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2005年11月27日 (日)

無人島

近代文学について研究なさっている方が、研究のためのアンケートに協力して欲しい、ということでご来館になりました。
アンケート内容は「後世に遺したい文学者・作品」ということなのですが、さてどうお答えしようかと考えているうちに、アンケートの趣旨からは少し外れるのですが、あることを思い出しました。

よくある質問に、『無人島に一冊だけ本を持っていくなら?』というのがあります。

吉川英治は、この質問に対して、こんな風に答えています。

何も持っていかない。

どういうことかというと、≪本など持っていかなくても、空想に遊んでいるだけで退屈しない、空想の中で、自分が生み出した作中人物と語り合うだけで、いくらでも時間をつぶせる≫ということなのです。

最近物忘れがひどく、出典がどうしても思い出せないので、記憶だけで書いていますから表現は正確ではありませんが、これに似たことは、何度も口にしています。

例えば、丹羽文雄が、こんなことを書いています。

 あるとき吉川さんが、私にいったことがある。
「小説の筋を考えていると、つぎからつぎに浮かんで来て、収拾がつかないくらいだ」
 という意味であった。羨ましい小説家だと思った。
(「吉川英治とわたし」所収『吉川さんのこと』より)

丹羽文雄のみならず、すべての作家が≪羨ましい≫と思うことでしょう。

この尽きることのない空想力があればこそ、生涯に長短あわせて240編近い小説を遺すことが出来たのでしょうね。

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