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2005年12月 8日 (木)

モデル

作品の登場人物のモデルということでは、吉川英治はこんなことを書き残しています。

史上の人間に、仮名を与えて、モデルとして自由に使うことはあるが、現代ものの作家のように、知人や、近親の人を、そのまま、作品の主要人物にとりいれることは、僕にはない。
(「草思堂随筆」所収『春日書斎開放』のうち『感情混線』より)

これに続けて、「自分の書いている小説の人物に、そっくりな、と思う人に、路傍でぶつかる」ことならばある、として、こう書きます。

「鳴門秘帖」を、書いている頃、上落合の家へ、直木三十五氏が訪ねて来た。たしか、雲重の刀だったと思う、ふくろに入れた、長いのを提げて、あの頃は、晩年よりも、よけいに浪人じみていたので、のっそりと、書斎へはいって来た時、私は、私の書いている「鳴門秘帖」の旅川周馬が、いきなり、やって来たように感じて、無意味に、おどろいた。

してみると、吉川英治は文子夫人に会った時に、≪お通≫を見つけた気持ちになったのかもしれませんね。

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