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2006年1月24日 (火)

教師

こんな問い合わせがありました。
現在60歳を過ぎた女性からのものです。

私が中学1年生の時に、学校で読書感想文を書く宿題が出て、吉川英治の「初旅坊ちゃん」を読んで感想文を書きました。
ところが、先生から、「吉川英治にそんな変な作品があるはずがない、でたらめなことを書くな」といってひどく怒られてしまいました。
本当に吉川英治の作品に「初旅坊ちゃん」というものはないのでしょうか?

これは、先生が悪い。
吉川英治には、確かに「初旅坊ちゃん」という作品があります。
『ラジオ 子供のテキスト』昭和12年1月号~12月号に連載された、いわゆる少年少女小説に属するものです。
戦後の昭和25年にポプラ社から単行本化されています。
いま60代の方なら、中学生の時に、この単行本を手にしたと考えれば、何の矛盾もありません。

そのようにお伝えすると、喜んでおられました。
積年の心のつかえがとれたのでしょう。

面白いもので、その問題となった吉川英治が、よく似た経験を自叙伝「忘れ残りの記」に書いています。
小学校の綴り方の授業で作文を書いた時の話です。

その作文の中に、ある折、俳句を入れて、先生に出しておいたのである。(中略)ところが、先生が後日、ぼくの作文を手に、顔を朱にしてぼくを戒めた、ことばの要は「作文は、自分の心を率直に云い現わし、文は自分の頭脳で綴るべきものである。いやしくも他人の詩歌などを、自分が作ったもののような振りしてさし挟むべきではない」という叱言だった。
先生は誤解している。俳句は、自分が作ったものだ。ぼくはそれを云おうとしたが(中略)、つい抗弁できなかった。ぼくは泣き虫の性だったとみえ、ただ涙をこぼして引っ込んでしまった。そして以後は、それにこりて、俳句などは決してひとに見せなかった。

吉川英治がこの「忘れ残りの記」を書いたのも60代のこと。
子供の頃、理不尽な叱られ方をすると、一生覚えているものなんですね。

それだけ教師の責任は重い。
大変なことだと思います。

もっとも、こんな風に生徒に弁解もさせず、一方的にやり込めてしまうようなものの言い方は、最近の先生には、少なくなっているのかもしれません。
むしろ、今それをやっているのは、生徒の親で、やられているのは、教師の方かも。

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