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2006年2月 7日 (火)

オンデマンド

ある資料をどうしても見たいので、自分が見学に行く時にそれを展示しておいてもらえないか、というご依頼を受けることがたまにあります。
今日もそんなお電話がありました。

私自身、他の博物館に出かけて、「あの資料が見たくてここに来たのに展示してないの?」とガッカリすることが、あったりします。

ですから、そういうことを望まれるお客様の気持ちは、わかるのです。

博物館の資料の中から、自分が見たいものを選択して、事前に伝えておけば、実際に見学に行った時にそれが展示されている、といったオンデマンドな博物館があれば、そんな有難いことはありません。

しかし、全ての人のそうした要求に応えることは、不可能です。
それぞれに異なる要求に応じて、何でもかんでも展示できるような空間を確保することは出来ませんし、労力的にも困難です。

美術品コレクションを持っている旅館が、常連のお得意様から、「今度泊まりに来た時には、あの掛軸を出しといてよ」などと言われて、それを次の宿泊の際に床の間に掛けておく、などということは出来るでしょう。
先日ご来館になった旅館・岩惣の支配人は、実際にそういうことをしているとおっしゃっていました。

ただし、それはお互いのことをよく分かっている常連さん相手だから出来ることでしょう。

面識もない方から、いきなりの電話一本で出来ることではないはずです。

デジタルアーカイブとか、バーチャルミュージアムとかいった、資料をデジタルデータ化して閲覧できるようにしたシステムは、そうした要求に対する一つの回答ではあるでしょう。

しかし、博物館の価値は、実際のモノがそこにある、という点にあります。
実際にそのモノを目にすることが出来るからこそ、人はその場所まで足を運ぶのです。

パソコンのディスプレイで見られればそれで良い、とはいかないところが、人間の人間たるところかもしれません。

ただ、理解していただきたいのは、博物館が提供するサービスの対象は、現在を生きている人間だけではない、ということです。

ちょっと大きな口を叩かせていただくと、100年後、1000年後の人々にも、博物館はサービスしなければならないという宿命を持っています。
そのために、展示と保存のバランスを考えなければなりません。

そのために、一定のローテーションで、同じ資料にばかり負担がかからないように、展示替えをするわけです。

そのあたりのことをご了解いただければと思います。

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