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2006年2月13日 (月)

飢え

吉川英治は、美味い不味いの前にまず胃袋を満たさねば話にならない、というような生活を少年時代から長く過ごしてきました。
そのことは、自叙伝「忘れ残りの記」に詳しく書かれています。
「どうも、ぼくのこの四半自叙伝は、貧乏ばなしに尽きてい、読者も又かと思われるだろうし、書いているぼくも実は気がヒケ出しているのである」と自分で書くほどに、先の見えない貧乏暮らしが続いた青春時代でした。

住み込みで働く英治の奉公先へ幼い弟が「家中きのうから何も食べていない」と泣き込んできたり、いよいよ食べるものに困って畑からジャガイモを盗んだり、そんな暮らしが赤裸々に書かれています。

食通に嫌悪を感じるのも、無理からぬところでしょう。
しかし一方で、こうも書きます。

ハムスンの「飢え」の中に、一週間も胃に物を入れない奴が、路傍の牛骨を拾って、いきなり、かぶりついた後で、へどを吐くところがあるが、彼はまだ幸福だった、なぜなら、独身者だった。
独身者なら、何も、ハムスンの「飢え」の人生ぐらいは、大した事業じゃない。第一、自分の体一つのくせに、あんなに食えなくなってるのが滑稽だ。
(「草思堂随筆」所収『歳寒飢語』より)

「お前、甘っちょろいよ」ということでしょう。

ちなみに、このハムスンの「飢え」は、先年発表された『史上最高の小説ベスト100』の中に含まれています。

これは、世界54ヶ国の作家100人の投票で決まったものだそうですが、受け取り方は人それぞれですね。

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