« お菓子 | トップページ | 食通 »

2006年2月 9日 (木)

蜜パン

お菓子の話では、吉川英治は≪蜜パン≫というものが好きだったようです。

抹茶の菓子にも、あれこれほとほと上菓子には飽きてきて、近ごろはまま子供の頃によく食べた“蜜パン”なるもので一服やったりしている。食パンに黒蜜をなすッたものである。ところがその蜜にまたいいのが少ない。そこで葛餅では古舗の名のある亀戸の船橋屋から蜜だけ時々もらってそれをやる。
(随筆『舌のすさび』より)

東京の亀戸天神近くにある船橋屋は、今も続く有名店ですが、そこから肝心のくず餅は置いておいて、黒蜜だけもらっていた、というわけです。
そして、この続きがあります。

クズモチ屋の古舗へ蜜だけくれというのも何だかわるい気がするのであるが、じつは或る年の正月、その船橋屋の屋根看板をつい書かされてしまったことがあるのである。(略)こっちは屠蘇機嫌か何かだったにちがいない。あとではどんな字をぬたくッたやら覚えてもいなかった。また気味が悪くて自分では以後見にも行っていない。しかし一場のそんな酒の上の業が、蜜となったかと思うと、おかしくもあり、蜜パンの味もまた、わたくし独りにはかくべつな風味がある。

船橋屋には、今もこの看板が残っています。
屋根看板と書いていますが、今は店内に掲げてあります。

どんな字が「ぬたくッ」てあるのか、興味のある方は、足を運んでみてください。

|

« お菓子 | トップページ | 食通 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« お菓子 | トップページ | 食通 »