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2006年6月18日 (日)

指定管理者制度

先日、全国文学館協議会の幹事会に出席しました。

最近、全国文学館協議会で深刻な話題となっているのが、指定管理者制度です。

この制度は、大まかに言えば、地方自治体が設置した公共施設の運営を自治体が指定する民間組織に委託する制度です。
民間に委託することで、サービスの向上を図りつつ、自治体の財政負担を小さくしようというのが、その目的なのでしょう。

吉川英治記念館は、元々民間の財団法人によって運営されています。
よく来館者の方から、「ここは青梅市が運営しているんですか」などと聞かれたりしますが、そういうことですので、当館には公金は全く入っていないのです。

したがって、この制度に関しては、対岸の火事という感覚が個人的にはぬぐえないのですが、文学館の大半を占める公立の館にとっては、非常に深刻な問題です。

切迫感が無いなりに、拙い頭で問題点を考えてみましょう。

指定管理者は、数年ごとにその運営内容が評価され、それに基づく審査によって、委託契約を継続するかどうかが決められます。

まず、一体何を評価するのでしょう。

入館者数やミュージアムグッズの売上げでしょうか。
わかりやすく数値で測れるものは、そんなものしかありません。
もちろん、これは重要な数値で、ないがしろにしていいものではありません。
しかし、それだけで博物館・美術館の価値を測れるものでしょうか。

また、博物館・美術館の資料は、未来からの預かり物でもあります。
適切に管理し、未来へと橋渡ししなければなりません。
数年ごとに管理者が代わりうるような制度の下で、それが可能でしょうか。

もちろん研究活動についても、それは言えます。
管理者が代わる度に学芸員が代わるというのでは、一貫性のある人材育成が出来ません。
それこそ博物館・美術館の価値を損なうことになるのではないでしょうか。

そもそも、ある指定管理者のもとで購入された資料は、一体誰の所有物になるのでしょう。
運営は民間の管理者、資料の購入は地方自治体という形にするのでしょうか。
そんな状態で、コンセプトのある資料収集が可能なのでしょうか。
どんな資料があるかということこそ、博物館・美術館の価値そのものだと思うのですが。

指定管理者制度下で想定できる最悪のシナリオは、博物館・美術館が単なるイベントスペース化してしまうということです。
自治体はコレクションの拡充を行わず、管理者は博物館・美術館の内容を充実させることには重きを置かず、集客力の高そうなイベントばかりを企画し、研究活動には人も資金も割かない。

かつて、自治体が競い合うように博物館・美術館・コンサートホール・競技施設などを建設していた頃、「箱物行政」などと揶揄されましたが、こうなってしまったら、本当に中身ナシのただの≪箱≫に成り下がってしまいます。

しかし、私自身は、こうしたバカな騒動に巻き込まれずにすむ立場にいながら、何ほどのことをしているのか、などと考えると、非常にヘコむので、このへんで思考停止に。

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