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2006年7月 6日 (木)

童女般若心経

こんな問い合わせがありました。

展示してある「童女般若心経」を書き写して帰ったのだが、一部分あいまいなところがあるので、正しい文言を教えて欲しい。

「童女般若心経」というのは、吉川英治が長女の曙美に結婚話が持ち上がった時に、自らの思いを込めて娘に贈った色紙のことです。
来館者の方からの質問が最も多い資料でもあります。

以下にその全文を書き写してみます。

心といふ字に似た花が
わたしのうちに咲きました
のぞけば神がかがんでる
青金色にかがやいて
いいえ顔さへ上げぬのは
露の精かもしれません
そこでそうっと
おまへはたれときいたらば
愛の蕋だといひました

曙美に与ふ

昭和三六夏雨夜
かる井沢にて 英治

よく質問されるのは「愛の蕋」の「蕋」とはどう読むのか、ということなのですが、これは「しべ」です。
いわゆる、「おしべ・めしべ」の「しべ」ですね。

「心といふ字に似た花」とは、おそらく露草のことでしょう。
その小さな花の中にも、大事な「しべ」がしっかりと育っている。

つまり、娘の心の中に、結婚を申し込んできた男性への愛情がしっかりと育まれているのを感じた、という父親の思いが、ここには込められています。

なお、曙美は、翌年春に結婚。
吉川英治の4人の子のうち、英治の存命中に結婚したのは、曙美だけ。
孫をその手に抱くこともありませんでした。

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