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2007年1月20日 (土)

微笑

吉川英治が≪顔づくり≫を意識するようになったきっかけがありました。

20代の後半、まだ作家となる前、職にあぶれていた時期のこと。
職探しに出歩くのだが、なかなか仕事を得られない。

その時、吉川英治は母親からこう言われたそうです。

或る時、母に云われた。後ろ姿にも、顔にも、貧相な、苦労負けみたいなものを、若いくせに、ぶら下げていて、たれが、おまえの履歴書などをとりあげるもんですか――と。なるほどと思った。
(随筆「焚き反古の記」より)

そう言われた英治は

朝。鏡を見ることにきめた。意識的に、つねに、微笑をもつことに心がけた。(略)顔を洗いに出て、歯ぶらしを咥えながらも、水仙の顔を見て、自分の顔も明るくもてるように気をつけた。

その結果、母親から、今度は「このごろ、おまえは、寝ていても、笑い顔をしているのね」と言われるまでになります。

ただ、微笑だけでは、すぐには運命は開かれません。
英治自身、そう言われた頃が、人生の中で物質的にも、精神的にも、最悪の苦闘をしていた時期だったと書いています。

関東大震災を機に作家へと転身し、成功をおさめるのは、これから数年後のことでした。

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