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2007年4月 5日 (木)

作家と読者

先月、九州にお住まいの方から、吉川英治の書簡をご寄贈いただきました。
ありがとうございました。

ご寄贈いただいたのは、ご寄贈者のお母さま宛に出された吉川英治の書簡2点と、年賀状1点です。

詳しい内容は明日以降に紹介しようと思いますが、概要は以下のようなものです。

ご寄贈者のお母さまは若き日、病院で働きながら、作家になることを夢みる文学少女でした。
ご寄贈いただいた中の書簡2点は、ご寄贈者のお母さまが、作家になるにはどうしたらよいか、という相談の手紙を吉川英治に送ったことに対する返信となっています。

その日付は昭和3年4月16日と同4月22日。

吉川英治の書簡としては、かなり古いものの部類に入ります。
その点がまず貴重です。

内容的にも面白い点があります。

それは、2通目の書簡に、元々の相談の手紙も同封されており、やりとりの中身が部分的ではあるものの、分かるようになっていることです。

作家の元には同じような相談の手紙は山ほど届くものだと思います。
マメな人なら返事を書くでしょうが、無視する場合も少なくないでしょう。
そして、そうした手紙をいちいちきちんと保存しておくことは、まずないと思います。
事実、吉川家にもそうした種類の読者からの手紙は残されていませんでした。

ところが、この書簡の場合は、ある理由から元々の送られてきた手紙を同封して送り返しているため、それが今まで残ったという点で珍しいものになっています。

それにしても、作家を志す若い女性が、なぜ吉川英治なのか、という気がします。
しかも、昭和3年なら、「鳴門秘帖」などの作品で人気作家となっていたとは言え、まだ作家デビューから5年ほどの新人作家です。

その点は、ご寄贈者の方に問い合わせてみましたが、確たることはわかりませんでした。

ただ思うのは、学歴もなく、様々な職を転々とした挙句に作家となったという吉川英治の経歴に、やはり学歴もなく、働きながら作家を夢見ていたご寄贈者のお母さまが共感と希望を持たれたのではないかということです。

吉川英治に寄せる読者の思いの一端がうかがえる書簡だと思います。

なお、ちょうど月も4月なので、早速、展示に使用させていただいています。
ご興味のある方はお運びください。

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