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2007年5月27日 (日)

青森(1)

青森県を舞台にした作品には、「紅騎兵」と「鬼」の2作品があります。

執筆順とは逆になりますが、短編ですぐに読める「鬼」からご紹介。

「鬼」の主な舞台は五所川原。

津軽藩の足軽頭・棟方与右衛門は、同僚を殺害したうえ藩金を持って逐電した福原主水を討つよう君命を受けながら、主水の話にほだされて、その逃亡を見逃してしまう。
幸い閉門五十日という軽い沙汰で済んだものの、それ以後、周囲からは穀つぶしと蔑まれていた。
その屈辱に耐えながら、何か自分に出来るご奉公はないものかと模索していた与右衛門は、長年の藩の困窮を救うため、岩木川の治水開墾事業を藩主に献言し、自らその奉行として五所川原へ赴く。
周囲の反対、自然の暴威、貧苦の上に労役を強いられる百姓たちの抵抗にあいながらも、強い決意で事業を推し進める与右衛門。
事業達成のためには、苛烈な仕打ちも辞さない与右衛門を、民は陰で≪鬼≫と呪った。
しかし、ついに治水事業は成果を挙げ、開墾地の田は青々と育ち、豊かな収穫を予想させるまでになった。
かつて与右衛門を≪鬼≫とののしった百姓たちも、その成果に対し、与右衛門様は救いの神よと感謝し、事業達成の祝宴を開くことにした。
だが与右衛門は、事業の完成を見届けると、民に対する過酷な仕打ちを詫びる遺書を残して、覚悟の切腹を遂げてしまうのであった。

初出は『オール読物』昭和12年1月号。

現在も刊行中の「吉川英治歴史時代文庫76 柳生月影抄 名作短編集二」(講談社)に収録されています。

070704追記

平成に入って刊行されたものとしては、この他に「吉川英治時代小説傑作選 さむらい行儀・無宿人国記」(平成15年3月 学研M文庫)もあります。

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