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2007年5月16日 (水)

蘭童徳器対舌図

吉川英治が、昨日触れた福田蘭童を描いた色紙があります。
それが、タイトルの「蘭童徳器対舌図」です。

蘭童はもちろん福田蘭童。
徳器は、安藤徳器という人物のこと。

安藤徳器は1902年、山口県岩国市に生れた、文筆家・歴史研究家。
と言っても、そういう枠には納まらない多様な人物です。
昭和初年代に東京放送局(現NHK)に関わっていて、そのあたりで吉川英治と知り合ったようです。
頻繁に吉川家に出入りし、頼山陽に興味を持つ吉川英治を京都の頼家に紹介したり、英治が「宮本武蔵」の中で佐々木小次郎の郷里とした岩国への取材旅行に同行したりしています。
逆に、安藤徳器の結婚の際には、英治が仲人を務めています。
また、戦前、吉川英治が東京の赤坂表町に住んでいた頃、その隣家に住んでいたこともあります。

さて、ある日、ふらりと吉川邸にやってきた福田蘭童に、書斎で執筆中だった英治が、「もうすぐ終るから、隣の安藤徳器でも呼んで、飲んでいてくれ」と声をかけました。
そこで、蘭童と徳器が酒を飲んでいたところ、酔いがまわって、些細なことで二人は口喧嘩を始めます。
そこへやって来た英治は、これは面白いとばかりに絵筆をとり、松の木に三日月がかかり、徳利を前にして、二人がいがみあっている南画風の絵を描いて、両者に渡しました。

そのうち、安藤徳器に手渡されたものが「蘭童徳器対舌図」で、先年、安藤徳器の係累の方からご寄贈いただきました。
絵に添えて、

月一痕竹一管酒一瓶 蘭童徳器対舌図 英治併題

という賛が入れられています。

なお、昨日触れた、福田蘭童が吉川英治全集月報に書いた文章によると、蘭童に手渡したものには

蘭童一管携徳器一瓶擁談古新論旦愚談図

と賛が入れられているそうです。

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