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2007年6月30日 (土)

鹿児島

鹿児島県と言えば、鬼界ケ島の俊寛でしょう。
「新・平家物語」にも、このエピソードはもちろん登場します。
しかし、例によって、ここでは紹介しません。

鹿児島では、種子島を舞台にした「鉄砲巴」という作品があります。

天文十二年、種子島に南蛮船が漂着する。
種子島の領主・種子島時尭は、上陸してきたポルトガル人に大金を払って鉄砲を手に入れると、鍛冶の国助と国安に命じ、鉄砲を造らせるが、失敗。
それもそのはず、ポルトガル人が渡したのは故意に欠陥を生じさせたものであったのだ。
それに気づいた2人は、時尭の咎めを恐れて逃亡する。
時尭は南蛮船に使者を送って鉄砲の秘密を聞き出そうとするが、ポルトガル人たちは、上陸した際に出会った若狭という娘を差し出したら教えてやってもいいという返事。
時尭はやむなくそれを聞き入れ、若狭を召し出すために臣下の笹川小四郎秀重を送るが、実は若狭と小四郎は恋仲。
理不尽な沙汰に2人で自害しようとするが、時尭から依頼を受けた根来の法師・杉の坊がそれを止め、若狭を拉致して行く。
実は管領細川家の隠密である杉の坊は、若狭を国助と国安が使っていた鍛冶小屋に閉じ込めると、そこに捨ててあった欠陥のある鉄砲を手に入れて、島から抜け出す。
そこへ通りかかったのが堺屋又三郎と田布施源助。
鉄砲の噂を聞きつけ、商人の又三郎は鉄砲を商売にしようと、武芸者である源助は鉄砲で功名を上げようとして、種子島に忍んで来ていたのであった。
若狭を助け、小四郎と連絡を取った又三郎は、2人に策を授ける。
そして、ポルトガル人の要求通り、若狭が南蛮船に送られた晩、小四郎、又三郎、源助らは南蛮船を急襲し、若狭を救い出すとともに、細工のされていない完全な鉄砲を強奪する。
かくして、鉄砲は種子島から日本全国へ一気に普及していくのである。

鉄砲伝来については、時尭から鉄砲製作を命じられた鍛冶職人・八坂金兵衛清定が、当時の日本にはなかった銃身の筒底を塞ぐネジの製法を知るために、娘・若狭を南蛮人に嫁がせる代わりに秘密を聞き出した、という言い伝えがあるそうです。

この小説はそれを下敷きにしたものでしょうが、わからないのは、この小説にも若狭の父として八坂金兵衛は登場するものの、単なる浪人で、鍛冶職人とはされていないことです。
伝承に肉付けするのではなく、作り変えてしまっています。

名前をそのまま使っている以上、話自体はちゃんと知っていたはずだと思うのですが。

初出は『講談倶楽部』大正14年12月号。
単行本は「吉川英治文庫159 剣魔侠菩薩」(昭和52年 講談社)が、最後になります。

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