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2007年7月 4日 (水)

大分(2)

もう1作は中津を舞台にした「夕顔の門」。

田丸惣七の娘・お市は、藩の鷹匠・曾我部兵庫との婚礼の前夜、恋人の深見格之進と駆落ちをはかるが、失敗。お市は連れ戻され、格之進は追っ手の隙を見てどこへともなく逃げ去った。
改めて兵庫に嫁いだお市だが、格之進を思い切れぬ心には、決して幸せとは言えぬ家庭であった。
今日も、お市が鷹を逃がしたことで口論しているところへ、深手を負った浪人が逃げ込んでくる。
それこそ深見格之進の成れの果てであり、彼を斬ったのは駆落ちの際に2人を追って行って格之進に顔を斬られた田丸家の若党・楠平とその郎党であった。
兵庫は、それが格之進と知りながら、なぜか匿う。
一方のお市は、怪我人が格之進と知って、駕を二挺用意させ、家を捨てて2人でどこかへ去ろうとする。
しかし、かねて見張っていた楠平一党と、父・惣七に阻止されてしまう。
家名の恥とお市を斬ろうとする惣七を止めたのは、意外にも兵庫であった。
お市がこうなったことに、親の落ち度、良人の落ち度はなかったか、瑕のある玉も身に帯びれば馴染むもの、縁あって良人となった者として、ここはお市の好きにさせてやって欲しい、という兵庫の言葉に打たれ、それに同意する惣七、楠平ら。
しかし、その時既にお市は駕の中で自害して果て、格之進は傷がもとで事切れていた。

初出は昭和13年6月発行の『婦人倶楽部 夏増刊号』。

面白いことに、同じ年同じ月に、大分を舞台にした作品を書き、なぜかそれっきり大分を舞台にした作品を書いていません。

単行本は「吉川英治文庫131 松風みやげ(短編集七)」(昭和51年 講談社)が最新のものとなります。

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