« 熊本(4) | トップページ | 台風 »

2007年7月13日 (金)

熊本(5)

熊本ゆかりの作品、最後はこれです。

「春秋編笠ぶし」

宇土の小西行長の配下の武士・松山新助は、その美男美声が戦国乱世で災いし、軟弱者と見られて軽く扱われ、初陣の機会すら与えられぬまま二十七歳となっていた。
秀吉の朝鮮出兵を控えたある日、隣接する熊本を領する加藤清正の家臣と小西家の家臣が国境で乱闘騒ぎを起こした時、助太刀に駆けつけた新助は鮮やかな鑓さばきを見せ、加藤家の荻生安太郎を倒す。
その腕の冴えが評価され、朝鮮出兵の第一陣に組み入れられた新助だが、心残りは恋人のお夏のこと。
新助と、やはり小西家配下の柘植半之丞の双方から縁談を申し入れられたお夏は、父・五島甚内に、二人のうち殊勲を立てた方を良人にすると意志を示した。
しかし、卑怯な半之丞は、朝鮮の戦場で新助を城壁から突き落とし、帰国するとお夏を騙して泉州堺まで連れ出し、無理やり夫婦となる。
さて、一方、新助に安太郎を倒された荻生家は、それを不名誉として知行を召し上げられ、朝鮮への出兵も差し止められたため、家名の回復のため、弟の式之助と従兄弟の久米寺源八が新助への仇討を狙っていた。
とは言え、生死不明の新助を追い求める旅はいつ終るとも知れない。
新助の消息を求めて訪れた名古屋で仲違いを始めた式之助と源八の斬り合いを止めた流しの編笠ぶしの唄うたいこそ、松山新助その人であった。
後になってそれに気づいた二人は新助を追い、ようやく甲賀の山寺で新助を発見する。
その新助は、生まれ持った労咳が悪化しているうえ、戦地で失明していた。
その姿に侮ったか、自分の復讐が済むまで仇討は待ってくれと言う新助に斬りかかる源八。
だが、新助の早業はたちまち源八を返り討ちにしてしまう。
冷静になった式之助に、半之丞への復讐という事情を話す新助。
すると式之助は、新助の消息を追ってお夏をつけるうちに堺で半之丞を見かけたと教える。
その言葉で堺へ向かった新助は、ついに半之丞を討つ。
また、半之丞の妻となっていたお夏は、なぜか助太刀にやって来た式之助に斬られる。
念願を果たした新助は、今度はお前が俺を討つ番だと式之助に告げるが、式之助は刀を捨てると、あなたの唄の弟子にしてくれと訴えるのであった。

初出は『オール読物』昭和6年4月号~12月号。
文庫本半分ほどの中編です。

単行本は「吉川英治文庫24 春秋編笠ぶし・菊一文字」(昭和51年 講談社)が最後となっています。

|

« 熊本(4) | トップページ | 台風 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 熊本(4) | トップページ | 台風 »