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2007年7月22日 (日)

酒に学ぶ

人からの頼まれごとに応えるため、吉川英治の酒にまつわる随筆を読み直して見ました。

リンク先である以前の文章で触れた「舌を洗う」「酒に学ぶ」「酒つれづれ草」のうち、「酒に学ぶ」は久しぶりに読みました。
というのも、この随筆は戦前の随筆集にしか収録されておらず、収蔵庫内の保存用の本を見るしかないので、必要に迫られた時しか読む機会がないからです。

この随筆、吉川英治が主宰した日本青年文化協会の機関誌『青年太陽』に連載された「現代青年道」(単行本のタイトルも同じ)という随筆の一編です(昭和11年1月号掲載)。
農村青年を教化することを目指した活動の一環ですから、他の酒がらみの随筆に比べて、硬く、いささか説教じみたところがありますが、酒の心得としては、なかなかな名言にあふれています(以下太字は引用)。

物を食ふごとく酒は飲むべきものでない。

物を食うのは肉体を養うためであり、酒を飲むのは精神を楽しませるためなのだから、目的が違う、したがって心構えも違ってくる・・・ということです。

酒は日本刀を液体にしたやうなものだ(略)
まちがふと、人も斬る、自分をも斬る。

いや、まったくです。
幸い私は大きな≪怪我≫はしていませんが、酔った勢いで人を殴ったり、痴漢をしたりして、社会的地位を失った人は少なくないでしょう。
気づかないうちに切腹しているようなものです。

とは言え、酒は悪いものではありません。

酒を人と飲む事は――人間のたましいとたましいとが素肌でふれあふやうなものだ。

よく言われる通り、酒によってその人の素の魂が出てしまう、だからこそより相手を知ることができるということですが、もちろん注意も必要です。

白刃の中に楽しむことが大勢で飲む酒である。

楽しく飲んでいる時ほど要注意、何しろ酒という≪日本刀≫を持っているわけですから、お互いに気をつけないと≪素肌のたましい≫を斬ってしまいます。
といってそれに怯えていては酒を楽しむことは出来ません。

で、畢竟、こういうことになります。

人のたのしむを以て、自分もたのしむ。
酒の真味は、これ以外にない。

これからの夏休み、実家に帰省して、旧交を温めるという機会もあるでしょう。
酒のせいで絶縁、というようなことにならないためには、頭においておきたい言葉です。

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