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2007年8月 7日 (火)

佐賀(3)

最後は「彩情記」。

鍋島藩の陶工・鶴太夫は、仁和寺宮へ献上品を届けるため、娘・曾女をともなって京都にやって来ていたが、仁和寺の寺侍の親戚である槙宗次郎に弟子入りを懇望され、国許に連れ帰ることとなる。
帰路、長崎に立ち寄った鶴太夫は、秘かに密貿易を手がける十右衛門に接触し、自作の陶器の売り捌きを依頼する。
家計を裁量していた妻を亡くして以来、芸術家肌の放漫経営で鶴太夫の窯は破産寸前だったため、たった一度のつもりで密貿易に手を染めたのであった。
そんな鶴太夫を突然ならず者が襲うが、駆けつけた宗次郎と謎の虚無僧によって鶴太夫は助けられる。
だが、そのどさくさにまぎれて虚無僧は宗次郎を斬り、彼の持つ身元保証の書付を奪う。
翌日、鶴太夫の元に現れた虚無僧は、自分を宗次郎として鍋島藩に入国させるよう要求し、鶴太夫と曾女はこの偽宗次郎とともに帰国の途に着く。
以来三年。
まじめに働く宗次郎の姿に曾女が心を開き始めた頃、十右衛門が鶴太夫を強請りにやって来る。
宗次郎が秘かに十右衛門を斬り捨て、事なきを得たかに見えたが、曾女に懸想する奉行の息子・大田黒哲馬は、恋敵を葬り去ろうという野心も手伝って宗次郎を捕縛する。
しかし、自分は仁和寺宮の家中の者であるという宗次郎の主張が通ったばかりか、その問い合わせをきっかけに仁和寺宮から鶴太夫に改めて献上品製作の依頼が来たため、哲馬の思惑ははずれ、しかも、いつのまにか曾女が宗次郎の子を身ごもっていたため、曾女を自分の妻にするという願いも適わなくなる。
その頃から、怪しい人物が鶴太夫の周辺をうろつき始める。
彼こそ、あの日、虚無僧に斬られ、死んだと思われた本物の宗次郎であった。
偽宗次郎に恨みを持つ哲馬と本物の宗次郎は結託して、偽宗次郎と鶴太夫を破滅させようとする。
しかし、哲馬は地位を利用して密貿易に関わっていたことがばれ、本物の宗次郎は関所破りの罪で、逆に身を滅ぼす。
だが、鶴太夫もわが身を恥じて自害、その鶴太夫の血書による訴えにより、偽宗次郎こと伍堂大三郎と曾女は領外への追放という温情ある沙汰を受けることとなったのであった。

初出は『婦人倶楽部』昭和15年1月号~16年1月号。

「隠密色絵奇談」というタイトルで単行本化されたこともあります。

「吉川英治文庫38 きつね雨・彩情記」(昭和52年 講談社)が最後の単行本です。

それにしても、この佐賀を舞台にした3作品は、陶工に美しい娘がいて、その娘に横恋慕した男によって苦境に立たされるという点が共通していて、物語としては同工異曲に見えてしまいますね。
特に「増長天王」と「彩情記」は、色絵の秘法を盗みに来た男と陶工の娘が恋に落ち、陶工もわざと秘法を漏らすという同じ展開があり、読み切り短編だった「増長天王」に肉付けしながら1年余の連載に引き伸ばしたのが「彩情記」だと言っても、あながち的外れではないような気がします。

もちろん、書かれていることは同じではないのですが。

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