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2007年8月10日 (金)

長野(1)

昨日「信州歴史時代小説傑作集」に触れたので、九州がまだ終っていませんが、ちょっと長野に先回りしてみます。

まずは、昨日も名を挙げた「銀河まつり」から。

信州松代藩の戸狩村は、昔から煙火師の里として知られていた。
この度、やはり名の知られた三河国の煙火師と、信州・三州それぞれの威信をかけた煙火試合が行われることになり、村はその準備に追われている。
藩からもその督励のため、狼火方の役人が村に入っている。
その一人、蜂屋慎吾は次席家老の息子だが、洋学かぶれの偏屈者のため、父である家老の依頼で狼火方に組み入れられた男。
村の煙火師を差配する郷士の教来石兵助の娘・お芳を見初め、妻にと申し入れている。
そのお芳は、実は兵助の目を盗んで煙火師の七之助と関係を持っていた。
花火製作の打ち合わせの会合の席で、洋学かぶれの慎吾は、「西洋の薬品など使わぬ、おれは日本流でやる」と言う七之助を時勢遅れと非難し、大喧嘩となる。
後日、お芳が七之助にこっそり貸し与えていた教来石家に伝わる秘蔵の書物を、兵助の命で取り返しに行こうとすると、それを知った慎吾が無理やりお芳に付き添って七之助の小屋にやって来る。
そこでお芳をめぐって争いになった二人は、意地づくから、事の決着を花火の打揚げ勝負で決することとした。
勝った者がお芳を得、負けた者は勝った側の制裁に服すと決めて。
さて、学問に秀でた慎吾の弁術に接するうち、七之助を頑迷な職人と感じるようになったお芳は、勝負のための花火製作の間に、慎吾と逢瀬を重ねる間柄になる。
勝負の日、七之助の花火は、不発の「黒玉」であった。
実は、慎吾が七之助のものと自分のものをすり替えていたのだった。
勝ち誇る慎吾が打揚げ筒に火を入れた瞬間、七之助が「しまった」と声を上げる。
その声につられて、うっかり筒を覗き込む慎吾。
次の瞬間、慎吾の首は花火とともに吹き飛ばされていた。

吉川英治の「穂波村から」という随筆に、信州を旅行中に戸狩村出身の老人から煙火師にまつわる伝承をいろいろ聞いた中に、自分の首を打上げてしまった男の話があったことが書かれています。
それを元にした小説です。

初出は昭和5年11月10に発行の『サンデー毎日』臨時増刊号。

現在も刊行中の「吉川英治歴史時代文庫75 治郎吉格子 名作短編集(一)」に収録されています。

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