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2007年8月30日 (木)

頭巾

先日、コメント欄を通じて質問が寄せられました。

吉川英治が「鳴門秘帖」の中で挙げている頭巾がどういうものか知りたい、というものでした。

「鳴門秘帖」の、最初の章である『夜魔昼魔』に、確かにいくつか頭巾の名称が出てきます。

すりの見返りお綱がしている≪のしお頭巾≫。
そのまま登場人物の名にもなっているお十夜孫兵衛の≪お十夜頭巾≫。
それに合わせて地の文で列挙されているのが、≪岡崎頭巾≫≪露頭巾≫≪がんどう頭巾≫≪秀鶴頭巾≫≪お小姓頭巾≫≪なげ頭巾≫。

≪のしお頭巾≫と≪お十夜頭巾≫は挿絵でわかるとして、≪露頭巾≫≪秀鶴頭巾≫≪お小姓頭巾≫がわからない、とのお尋ねでした。

そう言われてみると、私もさっぱりわかりません。

とりあえず、館で所蔵している吉川英治の旧蔵書の台帳を見て、それらしいことの出てきそうな書籍をピックアップして、確認してみました。
書誌は省きますが、「江戸生活辞典」「日本服飾史」「服装史」「日本衣服史」「古今服装の研究」といった書籍には、頭巾についての記述がなかったり、あってもごくあっさりしたものであったりで、必要な記述が見出せませんでした。

ある程度まとまった記述があったのは、「嬉遊笑覧」です。

言及されている様々な頭巾のうちに≪おかさき頭巾≫≪がんどう頭巾≫≪なげ頭巾≫の名が見えます。
もっとも、文章を読んでも、全く形状の想像がつきません。

≪こしやう頭巾≫というものもありますが、英治が挙げている≪小姓≫とは音が通じるものの、≪胡椒≫の字があてられており、同じものなのかどうかは判然としません。

ちなみに言えば、「嬉遊笑覧」には≪のしお頭巾≫≪お十夜頭巾≫の記述もありません。

吉川英治が所蔵していたことのある書籍全てが当館に収められているわけではありませんので、必要な記述が見つからない可能性はあるなとは思っていたのですが、本当にかすりもしませんでした。

あまり返答が遅くならないよう、とりあえず、ここまでしかわかりませんでした(というより、わかりませんでした)というメールを質問者の方にお送りしましたが、どうにも気持ち悪い話です。

上記のような総論的な書籍には記載がないのなら、江戸時代の随筆類(「鳴門秘帖」自体が、司馬江漢の随筆「春波楼筆記」をヒントにしています)に、何か記載があるのかもしれません。

別のことを調べている時に、ひょっこり見つかるかもしれない、ということに期待をかけてみますかね。

ちなみに、講談社の「江戸語大辞典」には、ここまで揚げた頭巾のうち≪がんどう頭巾≫≪胡椒頭巾≫の項目があります。

≪がんどう頭巾(強盗頭巾と書くんですね)≫については≪からむし頭巾≫と同じものとあり、≪からむし頭巾≫の項目を見ると、「両眼だけ残し頭部・面部をすっぽり包む」とあります。
しかし、≪胡椒頭巾≫は「未詳」となっています。

そして、肝心の≪のしお頭巾≫≪お十夜頭巾≫≪露頭巾≫≪秀鶴頭巾≫≪お小姓頭巾≫は項目がありません。

困りました。

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