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2007年9月11日 (火)

福岡(1)

福岡は、「私本太平記」に重要な舞台として登場します。
九州に落ち延びた足利尊氏一党が、菊池一族と戦って九州を押さえ、再び京を目指すという一連の場面でです。

しかし、それは例によってここでは取り上げません。

それを除くと、福岡は短編が2作あります。

ひとつは「恋祭」。

宗像郷の郷士・帆足半九郎は、庄屋の宇土兵衛の依頼で宇土兵衛の家に伝わる名物の茶入れを堺の商人に売渡しに行った帰路、便船の中で顔見知りの大黒屋と出会った。
実は半九郎、宇土兵衛に渡すはずの茶入れの代金をつい使い込んでしまい、死ぬ覚悟をしていたところだった。
しかし、二人が出会った翌朝、便船が蘆屋の港に着いた時、姿を消していたのは七左衛門の方であった。
しかも、集めてきたはずの売上金は消え、遺書が残されていた。
七左衛門を迎えに来ていた息子の長太郎と信二郎は、父が自殺したとは信じられず、不審な行動をとる半九郎を下手人と疑うが、もみ合ううちに長太郎は半九郎に斬られてしまう。
この騒ぎで半九郎は奉行所に連行されるが、決定的な証拠もなく、無罪放免となる。
この事件以来、大黒屋は家運が傾き、長太郎と信二郎の兄弟は分家の彦十の家に間借りするまでに落ちぶれる。
しかも、長太郎は半九郎に切られた怪我がもとで廃人となっており、信二郎が煎り豆売りなどをして細々と暮らしていた。
一方の帆足家は近郷一の長者となっていた。
もちろん、元手は七左衛門を殺して奪った金である。
宗像神社で武術の納額試合が行われた日、半九郎の息子・亀之助は、彦十の娘・お真砂を見初め、嫁にと所望する。
幼い頃から七左衛門に信二郎の許婚と言われてきたお真砂は、信二郎に操を立て、それを拒むが、半九郎と結託した奉行から、彦十に不当な圧力がかかるなどしたため、承諾せざるを得なくなってしまう。
お真砂が亀之助との結婚を承諾した日、自分への操立てより両親の恩に報いてくれとの書置きを残して、信二郎は長太郎と共にいずこかに姿を消した。
そして、亀之助との婚礼の夜、お真砂は自ら命を絶つのであった。

一応、最後に、事が露見して半九郎たちが裁かれる事になるということが書き足してありますが、文庫ではそれが2行分で、本当に付け足し程度。
実質的に悪人がそのままで話が終るという、やや後味の悪い作品です。

初出は『日の出』昭和13年8月号。

単行本は「吉川英治文庫131 松風みやげ(短編集七)」(昭和51年 講談社)が最後となっています。

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