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2007年10月10日 (水)

案山子

開催していた企画展「吉川英治の意匠」が終了しましたので、一部展示を入替えました。

いま出しているものを少しご紹介してみます。

以前にも少し触れたことがありますが、こんな句の書かれた軸を出しています。

案山子いつか鵯や雀と仲のよさ

一見すると、何かほほえましい情景を詠んだ句に思えます。
しかし、この句には、こんな言葉が添えられています。

弓折れ矢つきていくさ終にまけぬ
嘘は鳥も長くはあざむかれじ 秋更けぬれば
進駐の米兵共と国民は いつかいくさ
わすれて いたるところに
交歓交生あだかも落穂
に群がるそれのごとし
昭和二十年晩秋

『鬼畜』と教え込まれてきた米兵も、同じ人間であった。
戦争というものによって隔てられなければ、心を通わせることも出来るのだ。

そういうことでしょうか。

ただ、「落穂に群がる」という一節が引っかかって仕方がありません。

食べていくために、ついこの間まで敵だったものにすり寄っている。

そんな皮肉を、この一節からは感じてしまいます。
考え過ぎなのかもしれませんが。

この一年後、「昭和二十一年晩秋」とある軸も展示しています。
英治自身の菊の絵に、次の句を添えたものです。

菊の花お許も味気なかろ今

この時、英治は終戦を機に創作の筆を折っていました。
菊の花に向かって、「お前も味気ないだろう」と問いかける英治は、何に味気なさを感じていたのでしょうか。

長年、魂を打ち込んできた文学を離れ、作品を書かないでいる日々にでしょうか。

それとも戦後の世相にでしょうか。

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