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2007年11月 7日 (水)

漢文は苦手

吉川英治の書を所蔵しているという方から、何が書いてあるのか教えて欲しいとのお尋ねをいただきました。

一勺水便具四海水味
世法不必盡嘗
千江月總是一輪月光
心珠宜当獨朗

これが、そのお尋ねの言葉です。

吉川英治の自作のものではなく、既存の漢文であるならば、ネットで検索すれば引っ掛かるのではないか。
そう考えて、検索してみました。

その結果、これは吉川英治が愛読した『菜根譚』の中に出てくる言葉だとわかりました。

しかし、どういうわけか、引っ掛かるのは中国語のサイトだけです。

しかも、そばにあった講談社学術文庫版の『菜根譚』を見ても、この言葉が出てきません。

何故?

文庫の解説を読んで合点がいきました。

『菜根譚』には大きく2系統の異本があるというのです。

ひとつは日本で主に流布している『前集』『後集』の2編からなるもの。
もうひとつは、中国では流通しているが、日本ではほとんど読まれていない『修省』『応酬』『評議』『間適』『概論』の5編からなるものです。
後者の『概論』に含まれる言葉はおおむね前者に含まれているそうですが、他の4編の内容は前者との重複はないのだそうです。

どおりで文庫に掲載されていないわけです。

しかし、吉川英治はこの言葉を書いているわけですから、どこかでこれを知ったはずです。
そこで当館で保管している蔵書を探してみました。

幸田露伴監修による『詳解全訳漢文叢書第12巻 菜根譚・言志四録』(至誠堂出版 昭和3年)が見つかりましたが、『前集』『後集』のもので、この言葉は出てきませんでした。

となると、短時間では見つけられそうもありません。

仕方が無いので、自分で訳して、お尋ね下さった方への回答としました。

わずか一勺の水も天下すべての水の味と同じである
だから、世の法をすべて試みる必要はない
千の川面に映じる月も本をただせば同じ月の光を映したものである
だから、人の心もまたそのようにそれぞれが明るくあるべきである

三行目までは間違っていないと思いますが、四行目の訳には自信がありません。
文学館の学芸員のくせに、古文・漢文は苦手なのです。

どなたか正しい訳をご教示下さいませんか?

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