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2008年1月10日 (木)

小田原散歩―おまけ

家族で宿泊した宿のある場所から小田原まで鉄道で移動する途中、JR東海道線の根府川駅を通りました。

家族がいたので降りませんでしたが、この根府川駅の近くに根府川の関所跡があるそうです。

先日触れた中野敬次郎の調査では、吉川家の先祖の中には、この根府川の関所番を勤めた人物もいたそうです。

根府川関所で六尺棒を持って案山子みたいに立っていた先祖とぼくとを見くらべたら、おかしくなってしまったのもむりはない。あとでぼくが壇に立つと聴衆はまた笑い直した。けれど笑われたあとは一ぺんに気らくになり、それだけ親しみぶかく話もでき、ひどく愉快な会となって終った。

「忘れ残りの記」に書かれた、小田原での講演会についての述懐です。

これは、この根府川の関所のことではありませんが、吉川英治は『英傑と凡物』という随筆の中で、ある逸話を紹介しています。

「土佐の吉井行二が敵討をした話」と書いていますが、こういう話です。

幕末維新の戊辰戦争の中、小田原藩の小泉彦蔵と山田龍兵衛が土佐の吉井顕蔵を斬るという事件が起きます。

この時、小田原藩は、藩論が佐幕と倒幕の間で二転三転していました。

旧幕臣らによって構成された遊撃隊の伊庭八郎や人見勝太郎らは、江戸を脱出し、箱根の関所を押さえようとしますが、関所を守る小田原藩は当初、遊撃隊を攻撃します。
ところが戦闘中に小田原藩は佐幕に転じ、遊撃隊と和解、遊撃隊を迎え入れます。
しかし、これに対して新政府軍から問罪使が送られると、あっけなく態度を翻し、新政府軍の命に服して遊撃隊を攻撃します。
伊庭八郎は、この小田原藩の態度を「反復再三、怯懦千万、堂々たる十二万石中、また一人の男児なきか」と罵ったと言われます。

吉川英治の父・直広も、このような経緯を持つ小田原藩士であったことを、生涯人に恥じていたと、英治は書いています。

そんな混乱の最中、新政府軍軍監である吉井は斬られました。

正確な史実は調べていませんが、英治の書くところによれば、小田原の入口である光明寺口を偽名を使って押し通ろうとしたため、小泉と山田に斬られたということのようで、吉井にも過失はあると言えるわけですが、結局、斬った二人は罪に問われ、鈴ヶ森の刑場で斬首と決まります。

この時、吉井顕蔵の子・行二が、許されて斬首の太刀取りとなります。
しかし、人の首を斬った経験などない行二は、山田の首をうまく斬ることができず、「西瓜を潰したようにしてしまった」。

それを見ていた小泉彦蔵、自分の番になった時に、吉井行二の顔を振り仰いで、

坊ちゃん、上手にやって下さい

と冗談を言ったのだそうです。

「小田原で少し武士らしい男といえば、この冗談をいった小泉ぐらいより他に誰も残っていない」という一文で、随筆を締めくくっています。

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コメント

初めまして。
突然のコメントで失礼いたします。

私は今、就職試験のため勉強中です。
参考書の中に吉川英治の名句として
「われ以外皆師なり」という言葉を見つけ
吉川英治の人柄にとても興味を持ち、
このHPにたどり着きました。

「われ以外皆師なり」という言葉を
残すに至った経緯、考え方などを学びたいと思っているのですが何か良いお方法をご存知でしたら教えていただけませんでしょうか?


投稿: きよ | 2008年1月10日 (木) 10時18分

>きよさん

とりあえずは、このブログ内のいくつかの文章をお読み下さい。

2005年6月 8日 (水)「我以外皆我師」
http://yoshikawa.cocolog-nifty.com/soushido/2005/06/post_025c.html

2007年5月11日 (金)「我以外皆我師也」
http://yoshikawa.cocolog-nifty.com/soushido/2007/05/post_9709.html

さらに吉川英治の人生をお知りになりたいということであれば、自叙伝である『忘れ残りの記』(講談社 吉川英治歴史時代文庫77)、やや古い本になりますが、尾崎秀樹著『伝記吉川英治』、松本昭著『人間吉川英治』、吉川英明著『父吉川英治』あたりをお読み下さい。

あとは、吉川英治の作品をお読みいただくことだと思います。
数が多いのですが(笑)

あ、そうそう、その参考書の書名をお教えいただけないでしょうか?
どのように紹介されているのか、ちょっと見てみたいので。

よろしくお願いいたします。

投稿: 片岡元雄 | 2008年1月10日 (木) 10時55分

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