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2008年6月 5日 (木)

小次郎、你輸了。

開催中の企画展「海を越えた吉川文学」ですが、同じ場面の各国語訳の文章を抜き出して、並べてみました。

場面は巌流島の決闘の一部分、言語は英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・中国語の五ヶ国語です。

見比べてみると、些細なことが結構面白く感じます。

と言っても、私がある程度理解できるのは英語と中国語だけですが。

「――武蔵っ」
「…………」
「武蔵っ!」
 二度いった。
 沖鳴りが響いてくる。二人の足もとにも潮が騒いでいた。巌流は、答えない相手に対して、勢い声を張らないでいられなかった。

これが英語では

“Musashi!”
No answer.
“Musashi!”
The sea rumbled ominously in the distance ; the tide lapped and murmured at the two men’s feet.

になります。

「……」を英語ではわざわざ「No answer」と具体的に書いています。

日本人ならば、「……」で無言を表していることがわかりますが、英語ではそういう表現はしないのでしょうか?

「一乗寺下り松の時といい、三十三間堂の折といい、常に、故意に約束の刻をたがえて、敵の虚を突くことは、そもそも、汝のよく用いる兵法の手癖だ。――しかし、きょうはその手に乗る巌流でもない。末代もの嗤いのたねとならぬよう潔く終わるものと心支度して来い。――いざ来いっ、武蔵!」

という小次郎の台詞ですが、

“You did this at Ichijōji, and before that at the Rengeōin. Your method seems to be to throw your opponent off by deliberately making him wait. That trick will get you nowhere with Ganryū. Now prepare your spirit and come forward bravely, so future generations won’t laugh at you. Come ahead and fight, Musashi!”

なぜ「三十三間堂」をわざわざ「Rengeōin」に言い換えたのでしょう?
確かに、蓮華王院が正式名称なのですが、Sanjūsangendōでは都合の悪いことでもあるのでしょうか?

ちなみに、同じ台詞が中国語(簡体字を日本の漢字に直しています)では

“你在一乗寺下松以及三十三間堂時、都故意遅到、対敵人趁隙攻撃、這可能是你慣用的手法。可是、我岩流可不吃你這一套。你最好有心理準備、光栄地死去、免得遺臭万年。来吧!武蔵。”

「末代もの嗤いのたねとならぬよう」が「免得遺臭万年」なんでしょうが、「遺臭」ですか(苦笑)

小次郎の“物干竿”が“晒衣竿”だったり、「うぬ。たわ言を」というのが“哼!胡説八道。”だったりするところが、色々と興味深いのですが、

「小次郎っ。負けたり!」

の名台詞が、

“小次郎、你輸了。”

なのは、へぇ?と思いました。
「輸」に「負ける」って意味があったんですね。

せっかくなので、この台詞を他の言語でも。

“You’ve lost, Kojirō.”(英語)
―Tu as perdu, Kojirō.(フランス語)
》Ihr habt verloren, Kojirō.《(ドイツ語)
―Has perdido, Kojirō.(スペイン語)

覚えておくと何かの役に……立たないでしょうね(笑)

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