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2008年6月 3日 (火)

山梨(1)

昨日、名前を出したので、久しぶりに作品紹介を。

「八寒道中」

“八寒嘯”の銘を持つ笛を携えて旅を続ける一人の男――紀州藩士の安成三五兵衛は、その美貌で妹をたぶらかし、父を切腹に追いやった仇・村上賛之丞を追って、もう4、5年も旅を続けていた。
もっとも、腕の立つ三五兵衛には、実のところ賛之丞を討つ事など造作もないことであったが、執念深く冷酷な彼は、あえて仇を討たず賛之丞を追い回し、怯えさせ、苦しめることに復讐の快感を覚えていたのである。
甲府に足を運んだ三五兵衛は、何気なく訪ねた笛師・春日平六から賛之丞の消息を知らされる。
それによれば、大月の先、小篠の侠客・鮎川の仁介のもとに賛之丞が身を寄せているという。
平六に促され小篠に向かった三五兵衛は、途中で道連れとなった女・お稲が賛之丞といい仲になっていることを知り、軽い嫉妬を覚える。
その夜、仁介の屋敷にわらじを脱いだ三五兵衛を、賛之丞は仁介の手下の助けを借りて返り討ちにしようとする。
しかし、それを見破った三五兵衛は、逆にお稲をさらって、屋敷を出て行く。
目の前で自分の情婦が連れ去られるのを、賛之丞はなす術もなく見送るのであった。

初出は『講談倶楽部』昭和4年1月号。
読みきりの短編なのですが、なぜか3年後に続編となる「野槌の百」という作品を書いています。

刊行中の「吉川英治歴史時代文庫75 治郎吉格子 名作短編集(一)」(講談社)に収録されています。

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