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2008年9月21日 (日)

菊池寛の書と画

やはり菊池寛記念館に貸し出した資料に、菊池寛から吉川英治に宛てた書簡があります。
内容も面白いものですが、それは措くとして、菊池寛の筆跡を見ていると、何とも子供っぽい感じを受けます。

昨日触れた命名の色紙は、それでもきちんと書かれていますが、書簡の文字はお世事にも上手な字とは言えません。
ちなみに、どちらも筆文字です。

それについて、吉川英治は菊池寛が亡くなった直後に書いた随筆「菊池寛氏と私」(初出:『キング』昭和23年5月号)で、こんなことを書いています。

ある時、菊池寛が習字を習い始めたと聞いた英治は、それはやめた方がいいと菊池寛に言ったそうです。

その理由は、「あなたの字は、天真らんまんだ。中学生時代とそんなにかわっていないでしょう。いや、いまみたいな年齢になっても、あなたの字はまるで子供だ。――その貴重なる童心の書をすてて、なにも今さら古法帖なんか習う必要はない」ということだった。

英治にそう言われた菊池寛は、それからは習字のことは言わなくなったそうですが、亡くなった後に菊池寛の息子の英樹から、亡くなる前の時期、茄子や南瓜の画などを少し描いたりしていたと聞いて、

私は菊池さんの絵だけは見たことがない。これは後で聞いて実に惜しいとおもった。画をやるなら反対はしなかったのに。――もしあの気性と書風のゆきかたで、菊池さんが画をやったら、武者小路氏の精進を以てしても、ちょっと寄りつけない南瓜図なんかが出来ていたかもしれない。

確かに、新潮日本文学アルバムの「菊池寛」を見ても、画は見当りません。

今回の菊池寛記念館の企画展の出品ラインアップにも、菊池寛の絵というものはないようです。

菊池寛がもう少し長生きしていたら、吉川英治の見立て通り面白い画を遺したかもしれませんが、結局は幻となってしまったようです。

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