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2008年12月 9日 (火)

おめでとう

年賀状と同様に時期が合うので展示に出した資料に昭和31年1月11日付の野間省一宛書簡があります。

野間省一は当時の講談社社長。
書簡の内容は、吉川英治が「新・平家物語」で朝日文化賞(現・朝日賞)を受賞したお祝いの品を野間から贈られたことへの礼と、ゴルフ大会で優勝したことへの謝意です。

このゴルフ大会というのは、講談社が主催して、新春に川奈のゴルフコースで毎年行われていた大会のことです。
戦後本格的にゴルフを始めてから、吉川英治もこの大会に招かれて参加するようになり、この昭和31年の時には見事優勝しました。

「クラブを手にして四年越し初めての優勝」と文中にあるように、これが生涯初めてのゴルフでの優勝。
「小生にとり忘れえない記念日」とまで手紙に書くように、この優勝は本当にうれしかったようです。

そのうれしさ余って、いまも語り伝えられる笑い話を引き起こしてしまったのが、この時でした。

初優勝の興奮冷めやらぬまま、宿泊している川奈ホテルのバーで家族と祝杯をあげていると、通りかかる知り合いたちが次々に「おめでとうございます」と声をかけていきます。
もちろん、「明けましておめでとう」という新年の挨拶です。
ところが、それを受けて英治は「イヤ、ありがとう、まぐれ当たり、まぐれ当たり」とトンチンカンな答え。
挙句の果てに「なんで、皆、こんなに早くおれの優勝を知ってやがんだろ」とつぶやいて、家族を爆笑させました。

ことゴルフになると、ほとんど子供になってしまう、そんな無邪気な一面を伝えるエピソードです。

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