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2009年7月30日 (木)

武蔵朗読

企画展『書簡に見る吉川英治の交遊』、次にご紹介するのは吉川英治宛の徳川夢声書簡です。

徳川夢声は活動弁士から転じ俳優から話芸まで幅広く活躍したタレントです。

書簡には「八月五日」とあるだけで、消印もなく、正確な日付がわかりませんが、本文でラジオ関東で「宮本武蔵」の朗読を始めることを伝えていることから、昭和36年8月5日であろうと推定できます。

というのも、ラジオ関東での「宮本武蔵」朗読は昭和36年12月9日から38年9月17日にかけて放送されたものだからです。

徳川夢声と「宮本武蔵」の朗読は、切っても切れない腐れ縁のようなものでした。

最初の朗読は「宮本武蔵」の新聞連載が終了した直後の昭和14年9月から始まりました。
ただし、これは武蔵役を坂東蓑助、お通を夏川静江、又八を御橋公が演じ、夢声は沢庵という配役だったそうです。
しかし、翌15年の2月からは市川八百蔵と夢声が交互に朗読するというスタイルに変更され、同年4月まで放送されました。

これが1回目。

次は昭和18年9月から20年1月にかけて。
これは夢声による独演で、戦時下にあって高い人気を得ました。
しかし、これは原作を大幅に削ったもので、第1回の放送でいきなり宝蔵院が出てくるという極端なものだったようです。

これが2回目。

昭和27年にはラジオ東京でも朗読をし、これが3回目。

翌28年1月19日には、NHKテレビの本放送(2月1日から)の前の試験放送として「宮本武蔵」から『茶漬』を口演。

そこへもってきてのラジオ関東ということになります。

そのため、書簡には「“またか”という気が自分自身でも致さないではありません」と正直に書いています。

しかし、続けてこう書きます。

しかし今度の企画はラジオ関東の/当事者の云によれば/全巻を削除なくソノママ通して/放送しようという/これは私としても初めての経験で/大いに興味が湧くのです

かくして2年弱をかけて、「宮本武蔵」の全巻朗読が行われます。

後にこれはソフト化されますが、昭和49年にエレックレコードから発売されたものはLPレコード101枚分、平成14年に新潮社がCD化しますが、それが77枚分という膨大なものです。

そんな放送の裏事情の書かれた書簡です。

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