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2012年6月10日 (日)

青空士官

これまた更新をサボっている間に、イベントが一つ終了してしまいました。

実は5月12日~25日に東京駅近くの八重洲ブックセンター8階ギャラリーで小規模ながら「没後50年記念 読み継がれる吉川英治文学」展を開催していたのです。
本格的な展示というよりも、出張展示という感じのもので、ご覧になった方が興味をもって吉川英治記念館まで足を運んでくれれば良いな、という企画です。

会場側からの要望もあり、会場の監視係はこちらで出すことになり、私も会期中何日か八重洲ブックセンターに出向いたのですが、何しろ場所が書店です。
合間合間に店内をウロウロして、何冊も本を買ってしまいました。

そのうちの1冊が横田順彌「近代日本奇想小説史 入門編」(2012年3月24日 ピラールプレス)。
この中の『近代日本奇想小説史番外編 児童向け戦後仙花紙本の奇想小説』という章の中に、吉川英治の「青空士官」が取り上げられていました。

さて、この作品をどういう観点で取り上げたのか、その内容をどう紹介しているのか、というと、「短篇戦争小説集」「三十八篇のショートショート集」「スパイ小説や世相風刺小説なども数篇含まれている」という文言が文章中に並んでいます。

あれ、「青空士官」というと、吉川英治には珍しい現代小説で、新聞社の伝書鳩係として仮採用された青年が、恋人とのすったもんだの末に、特ダネをものにして新聞社に本採用され、自身も恋人と結婚する、といった内容の小説のはずだけどな、横田氏が取り上げている昭和22年の早川書房版は編集が違うのだろうか?

ちょっと不可解だったので、現物を書庫から出してきて読んでみました。

小説の内容は私の記憶通りで、また、これ1冊が全て「青空士官」に当てられていて、短編集などではありません。

大体、「青空士官」は、『婦人公論』の昭和10年1月号~12月号に1年間連載された作品なので、短編ではないのです。
それに、上に書いたように、新聞社の伝書鳩係の話で、それゆえにタイトルが「青空士官」なのであって、戦争小説でもありません。

横田氏の本は何冊か読んでいて、大学生の頃にちょっとした講演も聴いたことがあります。
吉川英治の遠縁にあたる人物で攻玉社の創立者である近藤真琴が翻訳した「新未来記」が、日本初の翻訳SF小説と言われていることを知ったのも氏の著書によってでした。

しかし、これはいただけません。

目次が16項目に分かれ、小見出しが38あるというところまで細かく書いているのに、どうしてこんな勘違いをしたのでしょうか。
不思議なことです。

それにしても、どうせ吉川英治に目をつけるなら、横田氏にはこの作品あたりを取り上げてもらいたかったですね。
ペンネームが違うので気づかないかもしれませんが。

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