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2012年11月14日 (水)

群馬(1)

そんなわけで、作品を紹介してみましょう。

「石を耕す男」

元織田信長の鉄砲方だという出浦大介は、本能寺の変後、秀吉の家臣となるのを嫌って浪人し、自分の売り込み先を求めて、上州中之条にやって来た。
逗留する旅館・鍋屋の主人の話から、売り込むなら岩櫃城の真田信幸と決め、取り次いでくれそうな人物を鍋屋に尋ねる。
一人は乱波者の割田下総だが、これは中之条までの道中でたまたま一緒になった夏萩という娘をめぐって悶着となった人物で、望みは薄い。
もう一人は、その夏萩の父であり、地元の旧家の秋間三郎兵衛で、出浦大介はこちらへの接近を図ることにする。
出浦大介の心には、真田家の家臣となり、夏萩を娶るという願望が芽生えていた。
祭りを利用して夏萩に近づこうとする出浦大介であったが、夏萩に恋慕する割田下総と争いになり、斬られて傷を負ってしまう。
しかし、結果として、それによって出浦大介は秋間家に近づくことができ、一方の割田下総は乱波者に秋間家の娘はやれんと三郎兵衛から一喝され、すごすごと引き下がることになる。
九年後、出浦大介は鉄砲の改良の功により真田信幸の寵臣となり、出浦対馬守と名乗っていた。
そして、夏萩を妻とし、一子・新太郎をもうけていた。
対する割田下総は、乱波者の身分に縛られ、功績を挙げても報われずにいた。
その年、秀吉の小田原攻めに乗じて、真田軍は北条方の大戸城を攻める。
割田下総はおのれの力を見せ付けようと、大戸城に忍び込んで火を放ち、真田軍に勝ちをもたらすが、その独断を叱責され、また乱波者という身分もあって、信幸へのお目見えすら叶わない。
その頃、大戸城の残兵が、真田軍の裏をかいて中之条方面に出現、中之条に妻子を残している出浦対馬守は信幸に討手を願い出て中之条に急ぐが、町は焼き払われ、夏萩は人質として連れ去られていた。
夏萩を連れ去った北条軍を追討することを渋る出浦対馬守を罵倒した割田下総は、単身、北条軍を追い、夏萩を救い出す。
それから二十余年の元和元年。
平和になった世に乱波者の居場所はなく、割田下総は腕のものを言わせて近隣で盗みなどを繰返す厄介者となっていた。
郡奉行となっていた出浦対馬守は、住民からの訴えに、ついに腰を上げ、割田下総を成敗するために配下を連れて彼の家に向う。
自らは手を下さず割田下総の首を取った出浦対馬守が帰宅すると、この成敗になぜか同行しなかった息子の新太郎が旅装しているのに出くわす。
何故来なかったのかという出浦対馬守の叱責に対して、新太郎は「母からあなたの実子でないと打ち明けられた、母は自刃した」と告げ、そのまま出奔してしまうのであった。

初出は『週刊朝日』昭和9年秋季特別号。
最も新しい収録図書は「ふるさと文学館11 群馬」(平成6年 ぎょうせい)です。

割田下総はその身分から世に受け入れられずにいるという側面はあるものの、きわめて粗暴で自堕落で粘着質な男ですし、夏萩はそんな“だめんず”と情を通じてしまう浅はかな女です。
一方の出浦大介は弁舌鮮やかながら小心で侠気に欠ける策士です。

誰一人報われないし、新太郎を除いて誰にも同情し難い、あまり後味の良くない作品です。

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