« 作家の犬2 | トップページ | 時代劇 »

2013年1月27日 (日)

散髪

記念館のある柚木地域では、誰か亡くなると短期間に立て続けに葬式が続く、少なくとも3件は続く、という一種の伝説があります。

厳密に統計を取れば、ただの思い過ごしか偶然なのでしょうが、確かに、昨年末から年明けにかけて、数件の葬儀がありました。

そのうちの1件は、私も行きつけにしている散髪屋のおかみさんでした。

この散髪屋は、今のご主人の先代も散髪屋で、吉川英治から「鉄幹子」という俳号をもらった俳人でもありました。

吉川英治がこの地に住んでいた頃、頼まれて、いま記念館になっている屋敷まで出向いて、吉川英治の髪を切ったこともあったそうです。

もっとも、吉川英治はなぜか散髪嫌いで、そんなことも一度か二度くらいだったと聞きます。

では、あとはどうしていたかと言えば、文子夫人が髪を切っていたのだそうです。

その様子が、吉川英明著「吉川英治の世界」(昭和59年 講談社文庫)に書かれています。

しぶしぶと書斎から出て来て椅子に坐るが、そんな時でも、首に巻く白いシーツは、きつく締めさせなかった。「ゆるいと、なお、チクチクしますよ」と言っても、きついのは嫌だと言い張るのだった。
父にとって、母の散髪の利点は、そんな我儘がきくことと、時間が短く済むことだった。短く済むといっても、父の方で、「もういい、もういい」と、やめさせてしまうのである。

この文章から知れる通り、散発が嫌な理由は、首の周りにきつく布を締められること、長時間じっと座っていること、髪や顔を人にいじくられること、刈った髪がチクチクすること、などだったそうです。

子供か!と言いたくなる言い訳ですね。

しかし、厳しい父親の、こんな子供っぽさというのは、きっと息子から見て好ましいものだったのでしょう。

そんな気がします。

|

« 作家の犬2 | トップページ | 時代劇 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 作家の犬2 | トップページ | 時代劇 »