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2016年4月 9日 (土)

閲覧室

昨年の秋の開館期間に来館したお客様が、こんなことを言い捨てて行かれました。

どうして閲覧できる場所がないのか。
他の文学館にはあるのに。
展示を見て、本を読みたいと思っても、読めないではないか。
失望した。

確かに、吉川英治記念館には閲覧室はありません。
しかし、文学館と図書館は似て非なるものですから、展示内容に失望した、と言われれば、頭を下げる以外ありませんが、閲覧できないことに失望されても、おっしゃる通りです、とは同意できかねます。

また、閲覧室はないものの、ミュージアムショップには吉川英治歴史時代文庫全85巻を揃えており、販売もしていますので、展示を見て作品に興味を持ったら、ぜひ購入してほしい、というのが本音です。

とは言え、実は、閲覧スペースは設けた方が良いだろうとは、少し前から思っていました。

吉川英治記念館の元来のコンセプトは≪追慕の館≫です。

つまり、来館する方は吉川作品の読者で、その心の中には既に吉川作品がある。
そうした方が吉川英治記念館を訪れることで、吉川英治を偲ぶとともに、その作品を読んだ時に覚えた感動を思い返し、その時の自分を振り返る。
そういう心の動きを呼び起こす“呼び水”となることが、吉川英治記念館の役割である。

という認識の上に成立しています。
この前提では、当然、閲覧室は不要ということになります。

しかし、吉川英治没後50年を過ぎ、窓口で「吉川英治って何した人?」とお尋ねになる方も多くなってきました。
追慕だけではなく、吉川作品を、改めて紹介していくことも必要だとは、感じています。

そんなわけで、この春の開館期間中、仮の閲覧スペースを設けてみました。
普段、企画展示を行っている多目的室の展示を最小限にして、イスとテーブルを置き、吉川英治全集を並べて、自由にお読みいただけるようにしました。

常設展のこの春の特集は「スターでたどる吉川作品」ということで、様々な映画化・テレビ化・劇化作品を紹介していますので、その原作を各自が探して読んでいただくという意図もあります。

春の開館期間が始まって1ヶ月余り。

利用状況はまれにパラパラとページをめくる人がいるけれど、熟読している人は皆無、というところです。
まあ、長編作品を真剣に読み始めたら、開館時間だけでは足りなくなりますからね。
それなら、入館料が必要な文学館ではなく、タダで読める図書館に行くでしょう。

とは思うものの、閲覧スペースは今後も適宜設けていこうとは思います。

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