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2016年9月28日 (水)

吉川英治事典

「吉川英治事典」(志村有弘編 勉誠出版 2016年8月15日)という本が出版されました。

吉川英治についての研究書は、しばらく出版されていません。
新装版などを除くと、タイトルに吉川英治の名を冠しているものは「吉川英治 ものがたりの時代」(中島誠 論創社 2004年5月31日)以来でしょうか。

見落としがあるかもしれませんが、10年は出ていません。

久しぶりなので、早速、購入してみました。

実は、この本の企画が進行していることは事前に知っていましたので、非常に期待していたのですが、案に相違して本文約300ページというコンパクトなものでした。

吉川英治は300ページに収まるような人物ではないと、思うのは、その関係者としてのひいき目でしょうか?

出版に勢いがない今のご時世、来年には没後55年となる作家の研究書に、500ページとか600ページとか、費やせないのも、仕方のない事ではありますが、事典と言うからには、そのくらいのボリュームを期待したのですが。

もう一つ、序文に吉川英治記念館への謝辞が述べられているのですが、いささか戸惑います。
正直に言えば、内容についてのご相談など正面切っての協力依頼はなく、個々の執筆者からの問い合わせに対して、回答を差し上げたにすぎないからです。

もちろん、吉川英治に関することだから吉川英治記念館が関与しなければならないという法はありません。
それよりも、吉川英治記念館が関わらない(つまり吉川家や私が関わらない)ことで、私には思いつかない異なる視点を与えてくれるかもしれないという期待もありました。

しかし、残念ながら、「これは!」というものは感じられませんでした。

それよりも、一度ゲラだけでも見せてくれたら、こんなイージーな間違いなんか、いくらでも指摘してあげたのに、という箇所が散見されて、とても残念な気分になりました。

まあ、一旦そういうことになったら、「一般項目篇」の項目の選び方がおかしいんじゃないかとか、つい口を出したくなっていたでしょうが。

いや、謝辞を述べておきながら、献本もないことに腹を立てているわけじゃないですよ(笑)

「作品篇」は、吉川英治の小説と随筆を200編ほど取り上げているので、非常に重宝します。
尾崎秀樹「吉川英治 人と文学」(新有堂 1980年7月15日)にも「作品解題五十選」という章がありますが、それよりも作品数が多いので、便利です。

それと主要参考文献目録は、これから吉川英治について調べようという人には、役に立つものだと思います。

そう、「事典」というと、ひとつの終着点のように思えてきますが、これはどちらかというと、これから吉川英治に向き合おうという人への入り口というべきものと感じました。

その意味では「吉川英治索引」という方がよりしっくりくるでしょう。

そんなことを感じました。


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