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2016年10月 2日 (日)

吉川英治の初恋

吉川英治が作家になるまでの若い日々をつづった“四半自叙伝”である『忘れ残りの記』。

私たちが青少年期を回顧する時、恋愛というものは大きな位置を占めるものです。しかし、『忘れ残りの記』の中には、恋愛話は登場しません。
父親の事業の失敗に伴い、小学校を卒業することすら許されずに、家計のために世に出なければならなかった吉川英治には、恋をする余裕もなかったのでしょう。

ただ、ひとつだけ、恋のようなエピソードが語られています。

吉川英治は、18歳の時に苦学の決意で、郷里の横浜から東京に出てきます。そして、紹介を受けて浅草三筋町の蒔絵師の元に住み込みで弟子入りします。
蒔絵師の自宅兼工房は四軒長屋の1軒でした。
その長屋の別の1軒に住む、造花の製造を行っている一家に、娘がいました。「紙人形のように薄手で弱そうな子」と英治が評するその娘に対し、心動かされたものの、ついに一言の口をきくこともないまま、娘の姿が長屋から消えます。
娘は上方の花柳界から舞妓に出たのでした。
しかし、娘はまもなく急死してしまいます。
娘の兄から、娘が死ぬ前に何度も自分の名を口にした、と聞かされた英治は、それを「終生の悔いである」と書いています。

(これは現在開催中の特集「吉川英治の恋」についての解説です)

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