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2018年3月 7日 (水)

忘れられた「続坂東侠客陣」

さて、現在、常設展は「最終回で見る吉川英治作品」というテーマで展示を行っています。

それに関連するトピックを、これからいくつかご紹介していこうと思います。

まずは「続坂東侠客陣」について。

“吉川英治”は実は本名ではなく、ペンネームです(本名は英次)。
このペンネームを初めて使用した作品が、雑誌『キング』に連載した「剣難女難」と、『面白倶楽部』に連載した「坂東侠客陣」です。どちらも大正14年1月号から連載が始まりました。

さて、「坂東侠客陣」は大正15年2月号をもって最終回となりますが、その末尾には「次号より引続き 続坂東侠客陣連載!」と謳われています。そして

作者より――拙作『坂東侠客陣』は、ここに一先づ前篇了りの形をとります。為に、篇末『海行く坂東調』の一節は多少粗描早筆の痕あるを否まれません。深くお詫び致します。

との一文があります。
確かに、事態の収拾のためにこれから敵地に乗り込む、というところで話が終わっています。

次号より引続きと謳われている「続坂東侠客陣」は、実際には2ヶ月後の『面白倶楽部』大正15年4月号から連載が始まります。
「坂東侠客陣」のラストシーンから6年後の後日談が描かれますが、わずか5回、大正15年8月号で終了します。短いながらも、中絶ではなく、一応大団円ということになっています。
ほぼ登場人物のその後を描いたにとどまるこの作品は、分量からすれば単行本化の際に「坂東侠客陣」の末尾に加えても、問題のないようなものですが、結局、そうした形にはなりませんでした。
大正15年11月に刊行された「坂東侠客陣」の初版本は、大正15年2月号の「坂東侠客陣」のラストまでで、終わっています。

「続坂東侠客陣」は、蛇足といえば蛇足ではありますが、かくして連載後いかなる本にも収録されていない幻の作品となってしまいました。

ところで、吉川英治記念館で刊行している『吉川英治小説作品目録』では、「続坂東侠客陣」は抜け落ちています。

おそらく最初に調査した人たちが、「次号より連載って書いてあるけど、3月号には出てないから、結局書かなかったんじゃない?」と判断したのでしょう。
見落とされたまま今日に至ってしまいました。

しかし、今月中に『吉川英治小説作品目録 増補改訂版』を刊行することになりました。
そこには、この他にもいくつか見としていた作品が収録されています。

これについてはいずれ日を改めてご紹介します。

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